【818】第2話 A2 『幕府の反応』≫
○江戸城・外観(夕)
○同・御用部屋(夕)
使いの者が報告をしている。
在府の浦賀奉行・井戸弘道(65)を中心に、阿部、忠優、牧野、乗全の老中陣、若年寄陣、井戸覚弘、本郷泰固が集まっている。
若年寄陣が、ガヤガヤと『えらいことになったの』だの話をしている。
使い「内海に侵入してきたのは、その旗印からメリケン国の艦隊だと思われます。浦賀沖まで侵入し、当地に投錨、現在停泊中であります。艦船4隻のうち2隻は、帆を畳み黒煙を吐き、船体の横についている巨大な水車により飛ぶ鳥の如く疾走、とてつもない速度で動き回る怪物にございます。しかもその4隻は何十もの大筒を装備し、船員は戦闘配置についており、一触即発の状況にございます」
弘道「ご苦労」
下がっていく使い。
一同「・・・」
一同の目が自然と忠優の方へ行く。
若年寄A「困ったことになり申したな」
若年寄B「まさしく阿部殿の危惧した通りとなり申した」
若年寄C「わしもメリケン艦隊来襲の話は気にかけておったのだ」
若年寄C「いかにすべしとお考えか、阿部殿」
牧野「・・・」
ばつの悪い牧野。
それ見たことか、の顔の乗全。
主張をしたのは忠優なのに、と不満顔の井戸覚弘、忠優を見る。
阿部「・・・」
やはり忠優を見る。
忠優「・・・」
忠優、目を閉じ、腕組みをしてピクリとも動かず。
牧野「どうもこうもあるまい。このまま引き上げさせるのみ。これまでと同じじゃ」
乗全「いや、戦闘準備をしているのだ。きゃつらの要求に応えねば、今度は戦を仕掛けてこよう」
牧野「そうなったら、戦に打って出るまで。日本刀のさびにしてくれるわ」
目を開き、一点を凝視する忠優。
考え込む忠優を見る阿部。
阿部「向こうから仕掛けてきたら戦うまで。しかし・・・、戦えばこの日本国が未曾有の危機に見舞われるのは必定。こちらからは決して手を出さない、その徹底を図るのがまず第一」
おもむろに口を開く忠優。
忠優「その上で」
一同が一斉に注目する。
忠優「向こうの出方を見る、今はそれしかあるまい」
一同「・・・」
忠優、井戸覚弘に目で指示。
井戸覚弘、頷いて席を外す。
忠優「今夜は・・・」
うつむいていた一同、顔をあげる。
忠優「眠れませぬな」
一同「・・・」
傾いた陽が庭を照らしている。
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