【829】第2話 D1 『米国国書全文』≫
○久里浜海岸
会見場を出ていくペリー達。
N「ペリーの国書全文は以下の通りである」
整列している米兵隊列の中を上陸艇に向かい、歩いていく。
上陸艇に乗り込むペリー。
その様子を井戸や戸田をはじめ、皆が見守っている。
N「偉大なる善き友へ。アメリカ合衆国海軍の最高位士官であり、貴帝国を訪問中の艦隊総司令官であるマシュー・C・ペリー提督に託し、この国書を謹呈する。私は陛下と陛下の政府に最も親愛なる気持ちを抱き、提督派遣については、合衆国と日本が友好関係を築き、お互い貿易すること以外の如何なる意図もないことを、皇帝陛下にはっきり申上げるようペリー提督に命じている」
黒船に向かい進んでいくペリーの上陸艇。
荘厳な会見場。
取り囲んでいる日本の警備兵たち。
N「合衆国憲法と法律は、他国の宗教や政治に関する如何なる干渉も禁じている。ペリー提督には特に、貴帝国の平安を乱す如何なる行為も差し控えるよう命じている。アメリカ合衆国は大西洋から太平洋までつながり、我がオレゴン領とカリフォルニア州は貴帝国に相対する位置にある。我が蒸気船は、カリフォルニアから日本まで18日で航海できる」
整列している米兵たち、順番に上陸艇に乗り込んでいく。
N「この素晴らしい我がカリフォルニア州は、銀、水銀、宝石、その他多くの価値ある産物の外、年間およそ6千万ドルの金を産出する。日本も同様裕福で肥沃な国であり、多くの価値ある産物を造り出す。貴帝国の人民は多くの分野の技巧に長けている。私は、日本と合衆国双方の利益のため、我が二国間の相互貿易を願っている」
次々と乗り込んでいく米兵たち。
N「貴国の祖法が支那とオランダ以外の貿易を禁じている事は承知しているが、今や世界情勢は変化し新しい国々もできているから、時として新しい法律を作るのも賢明な方策であると思われる。貴国の祖法が初めて出来たときは、そういう時代でもあった。ほぼ同時期に、時に新世界とも呼ばれるアメリカが最初に発見され、ヨーロッパ人が定住した。その後長期間人口は少なく、人々は貧しかった。今や人口は著しく増加し、商業も大きく拡大しているから、もし皇帝陛下が二国間の自由貿易を許す所まで祖法を変更できれば、相互に非常な利益があると期待されている」
上陸艇を受け入れているサスケハナとミシシッピ。
N「もし皇帝陛下が外国貿易を禁じる祖法を完全に廃止することに不安があれば、五年から十年に限り、試みに祖法を一時中止することも出来る。もし期待の通りに有利でなければ、また祖法に戻ればよい。合衆国もよく外国との条約に数年の期限を設け、その後更新するか棄却するか意のままにしている」
米兵全員が上陸艇に乗り、帰っていく。
遠くにありながらも圧倒的な存在感を示す2隻の蒸気船。
○サスケハナ・甲板(夜)
甲板上で宴会が催されている。
向かい合って日本側と米国側が座っている。
鳥や豚などの料理がテーブルに並んでいる。
N「ペリー提督には、皇帝陛下にもう一項を申し述べるよう命じてある。我が国の多くの船が毎年カリフォルニアから支那に向けて航海し、非常に多くの我が国民が日本近海で捕鯨を行っている。悪天候下には時として、そんな船が貴帝国の海岸に漂着する事がある。そんな時には必ず、別船を派遣し帰国させるまで、不幸な我が国民が親切に待遇され、その財産が保護されることを願いかつ望んでいる。本件は非常に重要な事項である」
ワインで乾杯し、料理を食べる両国代表ら。
N「ペリー提督は私から、皇帝陛下に次に述べる事柄を説明すべく命じられている。日本には豊富な石炭と食料があると理解している。我が蒸気船は広い太平洋横断で大量の石炭を消費するが、全てはるばるアメリカから持って行く事は不便である。我が蒸気船や帆船が日本に寄港し、石炭、必需品、水の供給を許可されることを望む。彼らは現金か貴国の人が望むもので対価を支払うが、皇帝陛下には、日本の南部に我が船舶がこの目的で寄港出来る適当な一港を指定していただきたい。我々はこれを非常に望んでいる」
酒が進み談笑している両者。
ズカズカと大砲や銃などを物色する中島、
大砲を触りながら『ペクサンだ、ペクサンだ』と言っている。
そのペクサンという言葉に反応し、それに対し露骨に嫌な顔をし『こいつらスパイだ』などと話し合っている水兵達。
N「以上、友好、貿易、石炭と必需品の供給、遭難者の保護、これらだけが、私が強力な艦隊と共にペリー提督を皇帝陛下の名高い首府・江戸に向け派遣した目的である」
宴には井戸覚弘、水野の顔もある。
N「皇帝陛下に贈呈品のいくつかをお受けいただくよう、ペリー提督に命じてある。それ自体たいした値打ち品ではないが、そのいくつかは合衆国製造品の見本であり、我々の心から敬意をこめた友情のしるしである。皇帝陛下に神のご加護あらんことを! 以上の証とし、アメリカ、ワシントン市の我が政府において合衆国の印璽を押し、我が名を署名する。1852年11月13日。陛下の善き友、ミラード・フィルモア。大統領に侍して、エドワード・エベレット、国務長官」
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