【845】第3話 D1 『島津斉彬、登場』≫
○薩摩・桜島
青い空。
青い空を覆い隠す噴煙。
豪快にその噴煙を上げている桜島。
○丘
桜島を望む高台を駆け抜ける早馬。
○集成館・外観
海に面した鹿児島市磯地区。
西洋式の建物が建っている。
早馬が入っていく。
○浜辺の射撃場
射撃をしている男。
使いの者が報告をしている。
使い「申し上げます。8月29日付で願い出ていた大船建造の解禁の議でございまするが、9月15日、正式に解禁が決定。我が藩の建造も許可された由にございます。また越前藩主・松平慶永公より『一刻も早いご上府を』とのことでございます」
射撃の男、ライフルを発射する。
的に命中するが、中心からははずれている。
射撃男「照準がまだまだ甘いな」
ばっと振り向いた男、島津斉彬(44)。
『島津斉彬』
斉彬「遠路、ご苦労。付いてまいれ」
使いの者と伴を連れて浜辺を歩く斉彬。
前方にくぼみがあり、そこから下を見下ろす。
使い「こ、これは」
○ドッグ
そのくぼみは造船のドッグとなっていた。
すでに大船は建造に着手され、船底が姿を現しつつあった。
驚いている使いをよそに
家老「殿と阿部殿は親しい。殿はすでに阿部殿から大船建造解禁の旨を聞かされ、すでに動いておられたのだ」
使い「さ、さすがはわが殿。ははー」
膝をつき礼をとる使い。
斉彬「ご苦労だが休憩したのちすぐに江戸へ飛んでくれ、『了解した。この斉彬、蒸気船をもこの1年で建造し、幕府に献上つかまつる』とな」
にやりとする斉彬。
N「島津斉彬、この時44歳。薩摩藩第11代藩主で、藩の富国強兵に成功した幕末随一の名君と謳われる。藩主に就任するや、洋式造船、反射炉・溶鉱炉の建設、地雷・水雷・ガラス・ガス灯の製造などの近代化を推進すると共に、西郷隆盛ら明治時代を築くことになる人材を育て上げたこともその功績の一つと言える人物である」
斉彬の自信に満ち満ちた顔。
噴煙を上げる雄大な桜島。
N「そして、忠優が幕政が根本から覆ると述べるほど唯一警戒する人物であった」
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