開国の父 老中・松平忠固

【855】第4話 B3 『直弼の茶室』≫

○彦根藩邸・茶室
カコンと鳴る鹿威し。
茶室内にいる直弼と長野。
長野「閣内の主導権は御老公から再び伊賀守に移ったようです」
茶碗に湯を注いでいる直弼。
長野「江戸に攻め入られ、とても戦にならぬと分かった途端に全く動けなくなるとは、御老公も存外情けないですな」
茶碗をかき混ぜている直弼。
長野「羽田まで前進してきたきゃつら艦隊を、横浜まで押し戻したのは伊賀守とのこと。やはりあの方はあなどれませぬな」
直弼「・・・」
長野「これからいかがしましょう」
直弼「・・・」
長野「横浜での交渉役も林大学頭を筆頭、次席に井戸対馬守、以下伊澤、鵜殿の4名となったようです。これもなかなかの人事ですな。林は伊勢様の、井戸は伊賀様の意向を受けておりましょう」
直弼「褒めてばかりおらぬで何か手はないのか」
長野「・・・」
しばしの沈黙。
鹿威しが鳴る。
長野「ここまで来たら交渉の成り行きの中から攻撃材料を見出していく他ありますまい」
直弼「そうだな」
苦虫を噛み潰したような直弼。

 

 

 

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