開国の父 老中・松平忠固

【858】第4話 C2 『初交渉』≫

○応接所
ペリーら一行が応接所に入ると、応接掛の5人は着席していた。
後ろや下座には、多数の従者や侍が正座している。
ペリーらが着席。
しばしの沈黙の後、林大学頭が口を切る。
林「水師提督マツテウセ・ペルリにおかれては、お初にお目にかかる」
通訳から話を聞くペリー。
ペリー「本日の祝いとして、日本皇帝に21発、応接掛に18発、それに初めての上陸を祝してさらに18発の祝砲を打ちたい」
通訳から聞く林、承認する。

 

○横浜表
艦隊から祝砲が打ち鳴らされる。

 

○応接所
57発の轟音が鳴り響く中、黙して聞く日本側。
日本側「・・・」
焦らない様に我慢をしているが、林と井戸覚弘以外の3人他周囲の者は冷や汗を流している。
林は無表情。
井戸は決意の表情。
日本側の表情を確認しているペリー。
ペリー「我が国は以前から人命尊重を第一として政策を進めてきた。自国民はもとより国交のない国の漂流民でも救助し、手厚く扱ってきた。しかしながら、貴国は人命を尊重せず、日本近海の難破船も救助せず、海岸近くによれば発砲し、また日本へ漂着した外国人を罪人同様に扱い、投獄する。日本国人民を我が国人民が救助して送還しようにも受け取らない。自国民をも見捨てるように見える。いかにも道義に反する行為である」
ペリーの主張を聞く日本側。
林「・・・」
井戸「・・・」

通訳「我が国のカリフォルニアは太平洋をはさんで日本国と相対している。これから往来する船は一層増えるはずであり、貴国の国政が今のままでは困る。多くの人命にかかわることであり、放置できない。国政を改めないならば国力を尽くして戦争に及び、雌雄を決する準備がある」
伊澤・鵜殿・松崎「・・・」
動揺している顔。
通訳「我が国は隣国のメキシコと戦争をし、国都まで攻め取った。事と次第によっては、貴国も同じようなことになりかねない」
しーんと静まり返る場。
静寂を破るように林が反論する。
林「戦争もあり得るかもしれぬ。しかし、貴官の言うことは事実に反することが多い。伝聞の誤りにより、そのように思い込んでおられるようである。我が国は外国との交渉がないため、そちらが疎いのはやむを得ないが、我が国の政治は決して反道義的なものではない。我が国の人命尊重には世界に誇るべきものがある。この三百年にわたって泰平の時代が続いたのも人命尊重の為である。第二に大洋で外国船の救助ができなかったのは大船の建造を禁止してきたためである。第三に、他国の船が我が国近辺で難破した場合、必要な薪水食料を十分に手当てをしてきた。他国の船を救助しないというのは事実に反し、漂流民を罪人同様に扱うというのも誤りである」
井戸「現に先日も貴艦隊の一隻が鎌倉で座礁した時それをいち早く艦隊に知らせたのは我々だし、投げ捨てられた荷物をすべて回収し船に届けたのも我ら。漂流民においても4年前にはプレブル号への貴国人漂流民の引き渡しが行われております。それは長崎奉行として私が行ったのだから間違いない」
ペリー「プレブル号・・・」
耳打ちするアダムス。
アダムス「確かに事実です」
ペリー「・・・」
二人のやり取りを確認しつつ
林「不善の者が国法を犯した場合はしばらく拘留し、送還後にその国で処置させるようにしている。貴官が我が国の現状をよく考えれば疑念も氷解する。積年の遺恨もなく、戦争に及ぶ理由はない。とくと考えられたい」
ペリー「・・・」
納得せざるを得ないペリー。

 

○隣の控室
隣で応接所の会話を聞き耳を立てている岩瀬と万次郎。
万次郎が何やら岩瀬に耳打ちしている。
それをうんうん頷いてメモし、それを使いに渡している。
岩瀬「・・・」
緊張の表情の岩瀬。

 

○応接所の外
外では海兵隊員たちが応接所をぐるりと囲って立っている。
その外には日本の侍たちが囲っている。
警備している一団の旗印は真田の紋章。
旗の脇にいる佐久間。
隣の絵師に海兵隊員の姿を書かせている。
佐久間「メリケン国人はでかいのぉ。黒い肌の者も白人と同じ服装をしている。奴隷ではないのか」
絵師の黒人の写生。

 

 

 

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