【859】第4話 C3 『機関車、カメラ』≫
○江戸城・執務室(夜)
雲がかった月夜の明かりが差し込む。
阿部と忠優に岩瀬が報告している。
阿部「そうか。第一回目の交渉は無事に終了したか」
岩瀬「はい。やはり想定通り向こうの最重要の主張は薪水・食料・石炭の供給と難破船救助でありました。それについては双方問題ありません。あとは向こうの主張する避難港をどうするか、そして通商はどうするか、の二点です」
険しい顔を崩さない阿部。
それに引き換え、嬉しささえ滲ませる忠優。
忠優「阿部殿、まずは上々の結果ということで一息つきなされ。とにかくここまで来たらもはや8合目じゃ」
阿部「・・・」
忠優の慰労にも緊張を解かない阿部。
○応接所・近辺
アメリカ軍楽隊が演奏している。
曲は『ヤンキー・ドゥドゥル(アルプス一万尺)』。
1/4スケールの機関車が設置されている。
向こうでは通信機が設置されている。
興味津々でそれらを眺める日本人。
別の場所では、黒人兵がタゲロ式の写真機を取り出して、象山と乗ってきた馬を映した。
象山が写真機を指さし、オランダ語で
象山「おお、タゲウロライペンじゃな。ちょっと見せてくれ」
と手振りで要求する。
黒人兵、タゲウロライペンという言葉に驚く。
英語でおまえ、知っているのかとか話しかけながら、象山にカメラを渡す。
象山、あちこちを眺めまわしたのち、黒人兵に尋ねる。
象山「これは、種板に使っているのは、イオジウムか、フロビウムか」
ずうずうしい象山、オランダ語だがちゃんと会話が成立している。
黒人兵は驚いて
黒人兵「・・・。フロミウム」
象山「やはりか」
興味が尽きないようにカメラを眺めまわし、部品を分解し始める。
黒人兵「ヘイ」
慌てて象山からカメラを取り返そうとする。
象山「いいではないか」
などと言いながら押し問答が続く。
ぽーっという汽笛が鳴り、向こうでは、完成したミニ機関車が走り出している。
驚いてそれに群がっている日本人。
その中の井戸と岩瀬。
井戸「・・・」
岩瀬「・・・」
初めて見る機関車に声も出ない。
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