【863】第4話 D3 『江戸、香港、横浜、そして』≫
○江戸湾内(夕)
○ポーハタン・提督室
ペリーが夕日に照らされる江戸湾越しの富士山を見ている。
ペリーの声「もし私が最初に取った立場から少しでも後退すれば、日本人は優位に立ったと思うに違いありません。また、私の既定の意図を一度でも変えさせることができると知れば、彼らは交渉中のいかなる事例においても、粘り強く揺さぶれば私を説き伏せられると思うでしょう。それゆえ、何があろうと意志を貫き、私が柔軟な性格の持ち主だと思われるよりは、むしろ理不尽な頑固者という評価を確立するのが得策だと考えました。結果を見れば、私の結論が正しかったことが明らかになるでしょう」
パイプをくゆらすペリー。
ペリーの声「日本の役人と会う時は相手がいかに高位の人物でも、かなりの身分の高い日本人がその前ではかしこまって跪く高官に対しても、常に対等の立場をとりました。また、私自身の地位に重みを加えるため、今日まで故意に宮廷のいかなる属官とも会うことを避け、私が帝国の諸侯以外には誰とも言葉を交えないことを知らせました」
○香港・アメリカ弁務官事務所(夕)
窓の外に美しい香港の景色が広がる。
ペリーの声「この極端な外交策を維持することで予想以上の成果をおさめ、多大の利益を得たものと信じています」
事務所内にいるマーシャル、報告書を読んでいる。
マーシャル「・・・」
報告書を机に投げ捨てる。
○同・ジャーディン社・執務室(夕)
ジャーディンが読んでいた報告書をケズウィックに渡す。
それを読んだケズウィック。
ケズウィック「ペリー提督が日本を開国させますか。予想の範囲内ですが、思ったより早かったですね。我が大英帝国が遅れを取ることになりますが」
ジャーディン、香港の景色を見ながら
ジャーディン「・・・。そうだな。スターリング提督には急いでもらう必要があるな」
ケズウィック「サー・アドミラルには何と」
ジャーディン「バッファローがインディアン砦を破壊したのでそろそろ笛を吹き、知らしめなくてはなりません。おまえは決してバッファローなのではなく主のある放牧牛なのだと」
にやりとするジャーディン。
香港の美しい夜景。
○横浜・松代藩陣屋(夕)
松代藩士が大勢いる中に象山がいる。
象山「下田が開港地候補に挙がっているですと。それは戦略的下策である。下田は異国人に上陸された場合、天城山という険害があり、海路でも太刀打ちできる大船がない」
聞いている家老。
象山「にも関わらず下田が押されているのは江川太郎左衛門による私計に間違いない。下田開港はこの人にとっては『一時の功策』かもしれませんが、我が国にとっては『千載の失計』となりましょう」
家老「・・・」
分からないので困っている。
象山「ご家老、横浜じゃ。我ら陣中のこの横浜こそ開港地に相応しいと何とか申し上げられまいか」
家老「無理なことを申すな。貴殿こそご老中に申し上げやすいのではないか」
象山「上田候は幕閣として開港地は天領と決めてしまわれておる。覆せるのは御老公しかおらぬ。東湖、そうか、東湖を使えば・・・、さすがワシじゃ。よし」
そそくさとその場を離れる象山。
○山の上(夕)
松代藩陣屋の上の高台。
松陰が佇んでいる。
松陰「・・・」
意を決した表情。
○江戸城・将軍謁見の間
一段高い将軍の座。
簾がかかっていて家定の顔は見えない。
家定に向かって報告をしている本郷。
本郷「メリケンとの交渉がまとまった由にございます、上様」
家定「そうか」
冷や汗を流す本郷。
人気の記事
- 【100】日米修好通商条約は不平等条約ではなかった カテゴリ: 日米修好通商条約
- 【164】最も印象的なペリーの日本評 カテゴリ: ペリー/アメリカ
- 【101】江戸幕府が既に『大日本帝国』を名乗っていた カテゴリ: 江戸幕府
- 【123】日本初の外資系企業は カテゴリ: イギリス/外資企業
- 【125】南京条約、香港がイギリスへ カテゴリ: イギリス/外資企業
- 【112】江戸幕府の出世コース カテゴリ: 江戸幕府
- 【124】アヘン戦争から日本の近代史が始まった カテゴリ: イギリス/外資企業
- 【163】ペリーの知られたくない事実を知っていた日本 カテゴリ: ペリー/アメリカ, 江戸幕府
- 【130】恐るべき佐久間象山の『海防八策』 カテゴリ: 佐久間象山/吉田松陰
- 【800】『日本を開国させた男/日米和親・修好通商条約締結物語』目次 カテゴリ: 映画ドラマ脚本
カテゴリー
最近のコメント
- 【150】忠固の左腕・井戸覚弘 に ATSUHIKO MOTONO より
- 【150】忠固の左腕・井戸覚弘 に 吉見 幸春 より
- 【008】御子孫からのメッセージ に 青木 より
- 【008】御子孫からのメッセージ に 青木 より
- 【008】御子孫からのメッセージ に ATSUHIKO MOTONO より
コメントを残す