【883】第6話 A3 『新香港総督ボウリング』≫
○香港
香港の風景。
多くの西洋船が停泊し、コロニアル風建築物が軒を連ねている。
○英国総督公邸・外観
華やかな洋館。
○同・庭
ペリーが歩いている。
マーシャルと話しているジョン・ボウリング(62)の前で止まる。
ペリー「失礼します。ジョン・ボウリング英国香港総督でいらっしゃいますか」
マーシャルがペリーに嫌な顔をする。
ボウリング、ギロっとペリーを見る。
ペリー「アメリカ太平洋艦隊司令長官マシュー・ペリーでございます」
ボウリング「・・・」
ボウリングが返事をしないのを見て、言葉に詰まるペリー。
マーシャルが厭味ったらしく話す。
マーシャル「申し訳ございません。アメリカ人は貴族社会の伝統を知らぬゆえ、どうも無粋になってしまう故」
ペリーに向かって蔑んだ目で
マーシャル「君、サーをつけたまえ、サーを」
ペリー「・・・」
ペリー、改めて
ペリー「ペリーにございます。サー・ジョン・ボウリング総督。総督赴任のご挨拶が遅くなり申し訳ありません」
ボウリング「4月13日にボナムに変わって赴任したばかりじゃ。うむ、ペリー提督か。聞いておるぞ、極東に行っておったのだろう、かのサムライの国を開国させたらしいの」
ペリー「はい。いささか苦労はしましたが」
マーシャル「なに、港を2港開いただけにて通商条約を結んだわけでもなく、大した成果ではござらぬ」
マーシャルを睨むペリー。
ボウリング「そうか。いや、わしも赴任した以上、大きな成果を上げたいと思っておってな。ここ支那にはもはや新たな成果はない。ワシも日本に行こうと思っている」
ペリーとマーシャル、驚く。
ペリー「なんですと」
マーシャル「聞いておりませぬぞ、そのようなこと」
ボウリング「ペリー提督は9隻の艦隊で来訪したそうじゃな。ワシは12隻以上の艦隊をもって日本、江戸に行く。未開国とはいえ我が都ロンドン、支那の北京と並ぶ百万都市というではないか」
ペリー・マーシャル「・・・」
ボウリング「百万の人間がパニックになり、逃げ惑う姿はそれは壮観であろうな」
マーシャル「し、しかし、日本へはいまスターリング提督が向かっているはずですが」
ボウリング「スターリングはあくまでチョロチョロと動き回るロシアのプチャーチンを補足するだけのこと。あくまで軍事行動じゃ」
ペリー「では、やはりクリミアでの戦争がここまで広がっておるわけですな」
ボウリング「この際、極東のロシア艦隊は全滅させ、カムチャッカの軍事基地も壊滅させる」
ペリー・マーシャル「・・・」
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