【914】第8話 A2 『賄賂』≫
○上田城・外観
○同・謁見の間
忠優が業者から生糸の献上を受けている。
N「生糸。それは、蚕の繭(まゆ)を製糸し、引き出した極細の繭糸を数本揃えて繰糸の状態にしたままの絹糸のことを言う」
○養蚕の風景
シルクロードの風景。
N「その歴史は古く紀元前3000年頃に中国で始まったと言われており、他の地域では生産ができなかったためインドやペルシャに輸出され、それがシルクロードの始まりとされる」
日本での養蚕風景。
N「日本にはすでに弥生時代に絹の製法は伝わっており、当初品質は中国絹にはるかに及ばなかったが、江戸時代中期には遜色がないレベルにまで達していた」
上田の養蚕風景。
千曲川の河原の桑園。
蚕種。
N「上田地方の養蚕業は平安時代にかなり発達し、本格的な桑園開発は江戸時代初期、千曲川沿岸を中心に桑園の造成が行われた。だが当時、幕府によって本田や本畑への桑の栽植は禁じられていた為、全国的には積極的な養蚕はなされていなかった」
○同・謁見の間
生糸の箱の横にもう一つの箱。
業者がふたを取るとそこには黄金。
忠優に箱を差し出している業者。
業者「お納め下さいませ」
忠優「・・・なんだ、これは」
業者「御家督御相続のお祝い金でございます」
忠優「・・・」
冷静に業者を見る忠優。
忠優「祝い金か。本当に祝い金だというなら拝領する。だがそれにしては金額がかなり多いようだが」
業者「はい。御祝い金の他にも、ぜひこれまで通り生糸の管理は一括して私どもにお任せいただきたく」
忠優「これまでお主たちが生糸の管理をしてきたのか」
業者「はい。生糸の生産・出荷・販売は全て私どもを通して行われます。そうして頂ければ、これからも一層金子を上納させて頂きますです。ははぁ」
ニヤニヤと手もみしながら話す業者。
考えている忠優。
忠優「なるほど・・・。そういうことか。逆に言えば、お前たちを通さないと商いができない、とそういうことか」
業者「はい。私どもが目を光らせてないと勝手に商売を始める輩がいて、そうなると上納金も減ってしまう塩梅になりますので。へぇ」
考えていた忠優、突然
忠優「よし」
忠優、立ち上がる。
忠優「我は養蚕をより奨励するつもりだ。その為に障害となるものは断固変えていく。我に上納など今後は必要ない。これも持ち帰ってよいぞ」
業者「ええっ」
驚愕する業者。
立ち去ろうとする忠優。
業者「お、お待ち下さいませ」
忠優、部屋を出る手前で振り返り
忠優「そうそう、祝い金だけはありがたく頂いていく」
バッと出ていく忠優。
片膝で立ち尽くす業者。
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