【921】第8話 C1 『ハリス来日』≫
○下田港
『下田』
外国船が入ってくる。
『安政3年(西暦1856年)7月21日』
その船を物見台から見ている井上。
井上「・・・」
船のマストにはアメリカ国旗。
甲板に立つ二人の男。
ハリスとヒュースケン。
ハリス「ここがサムライの国か」
○街道
早馬が走る。
○江戸城・外門
早馬が入っていく。
○同・御用部屋
阿部・堀田・牧野に伝令が報告をしている。
堀田「なに、アメリカの船が」
阿部「現地で準備にあたらせていた井上清直を早々に現地下田奉行に任命する手続きを。さらに、岩瀬忠震を現地に急行させるように。よろしいか、首座殿」
堀田「お、うむ。牧野殿、早々に手配せよ」
牧野「了解いたしました」
牧野、そそくさと出ていく。
落ち着かない堀田。
阿部「・・・」
○浜
船着き場に着けられている上陸艇。
ハリス、ヒュースケンが日本の役人と応対している。
役人「アメリカ国領事?駐在?だめだだめだ、そんなことできるわけがなかろう」
ヒュースケンがハリスに通訳。
ハリス「私は先日締結された日米和親条約に則って赴任した正式の国使だ。公式な資格にてこの下田に駐在する」
役人「そんな事を言われても困る。直ちに船に戻って引き上げてほしい」
押し問答の中、井上が現れる。
役人「井上様」
頷く井上。
○下田奉行所・内
室内に移って会談。
井上「条約に則って、というなら両国の合議の後に領事は派遣されるはずであるので、一旦引き上げてもらいたい」
ハリス「それは断固拒否する。なぜなら両国の合議の上などという文言はないからだ」
井上「・・・」
井上、不審な顔。
井上「では、領事の撤退についてアメリカ政府に書簡を送るので持ち帰ってほしい」
ハリス「であるならば、書簡は貴国の大臣、外相が出すべきものである。準備が整っていないというなら、我々は江戸に先に行って皇帝に謁見するので、その間に駐在に向けてこの地の整備を進めてほしい」
顔を見合わせる日本側役人達。
井上「貴殿らの目的は何か。領事の権限とはどのようなものか」
ヒュースケンから話を聞くハリス。
ハリス「我々の目的は、貴国と通商条約を締結することである。領事の人身は不可侵であり、その居宅には許可なく立ち入ってはならない。すべてのアメリカ人は領事の管轄下にある」
井上「・・・」
一同、困惑している。
○玉泉寺
あてがわれた寺から街を見下ろすハリスとヒュースケン。
寺を見ながら、
ヒュースケン「テンプルのようですな。まぁ、我慢するしかないですか。いかがです、コンシェル、この国の印象は?」
ハリス「うむ。私が見たわずかばかりのことからでは、喜望峰の東で見たいかなる人々よりも優れているように見える」
ヒュースケン「・・・」
ハリス「彼らはこの突如たる訪問に戸惑っている。この衝撃を鎮静化させ、友好的意向を持った静かな行動と私的交際によって、友情的感情を日本人との間に打ち立てる、それが最も有効と考える」
ヒュースケン「なるほど」
ヒュースケンがポールを打ち立てる。
はためく星条旗。
その星条旗を誇らしげに見つめる二人。
ハリス「ん?、あれは・・・」
眺めた先に、ハリスたちの米国船とは別にもう一隻西洋船が来た。
その船に掲げられるオランダ国旗。
ヒュースケン「オランダが来た・・・。いかがします?」
ハリス「うむ、悪いことばかりではない。この国のことは彼らはよく知っている。仲介役をしてもらって損はない」
うなずくヒュースケン。
洋上では、上陸船が準備されている。
人気の記事
- 【100】日米修好通商条約は不平等条約ではなかった カテゴリ: 日米修好通商条約
- 【164】最も印象的なペリーの日本評 カテゴリ: ペリー/アメリカ
- 【101】江戸幕府が既に『大日本帝国』を名乗っていた カテゴリ: 江戸幕府
- 【123】日本初の外資系企業は カテゴリ: イギリス/外資企業
- 【125】南京条約、香港がイギリスへ カテゴリ: イギリス/外資企業
- 【112】江戸幕府の出世コース カテゴリ: 江戸幕府
- 【124】アヘン戦争から日本の近代史が始まった カテゴリ: イギリス/外資企業
- 【163】ペリーの知られたくない事実を知っていた日本 カテゴリ: ペリー/アメリカ, 江戸幕府
- 【130】恐るべき佐久間象山の『海防八策』 カテゴリ: 佐久間象山/吉田松陰
- 【800】『日本を開国させた男/日米和親・修好通商条約締結物語』目次 カテゴリ: 映画ドラマ脚本
カテゴリー
最近のコメント
- 【150】忠固の左腕・井戸覚弘 に ATSUHIKO MOTONO より
- 【150】忠固の左腕・井戸覚弘 に 吉見 幸春 より
- 【008】御子孫からのメッセージ に 青木 より
- 【008】御子孫からのメッセージ に 青木 より
- 【008】御子孫からのメッセージ に ATSUHIKO MOTONO より
コメントを残す