開国の父 老中・松平忠固
【968】第11話 B4 『毒見』≫
○将軍の間
家定の前に食膳が並んでいる。
毒見役が食べ終わり、家定が食事を始める。
家定「!?」
何か違和感を感じる家定。
箸をおく。
家定「やめた。今日は食欲がない」
席を立つ家定。
付人「う、上様・・・」
あせる周りの者達。
家定「それと、石河を呼べ。すぐにじゃ」
○庭
遠くから家定の様子を見ている付人。
木に登っている家定。
下の枝で聞いている石河。
家定「い、石河・・・、毒じゃ」
石河「え?」
家定「おそらく毒をもられた」
石河「本当にござりますか。毒見の者の報告ですか?忍びからの?」
家定「余自身じゃ」
石河「う、上様自身・・・」
家定「確証はない・・・。今までにない初めての毒だ。いや、毒ではないのかも、気のせいかもしれぬ」
石河「上様・・・」
心配そうな石河に対し、
家定「ふふふ、余がなんで一通りの毒をかぎわけることができるか、不思議か、石河」
石河「はい。そんなことは毒見が致しますのに・・・」
家定「小さき頃からの習慣じゃ。なぜそんなことが習慣になったか、分かるか」
石河「・・・、いえ、分かりませぬ」
家定、冷たく笑う。
家定「余は何度も毒殺されかけた、しかも自分の祖父にだ」
石河「え?、そ、それはまさか」
家定「そう、前々将軍、家斉公だ」
石河「!」
家定「余を跡目にはしたくなかったのであろう、なにせあの人には53人も子がおったでな。もっとも、前将軍である父も余を跡目にはしたくなかったわけだが・・・」
石河、絶句。
家定「ふふふ、うつけのふりでもせぬと命がいくつあっても足りぬ。もう慣れたがな」
石河、感極まる、
石河「う、上様」
石河を見る家定。
石河「直ちに調査致します。ご安心を。私の命に代えて、上様をお守り申し上げます」
家定「うむ、頼んだぞ、石河」
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