【984】第12話 B4 『二朱銀の衝撃』≫
○横浜・両替所
天秤。
ドル銀貨と二朱銀貨が秤に乗っている。
ドル一枚と二朱銀貨2枚で釣り合っている。
オールコックはじめとする英国一行、二朱銀貨を眺めながら
オールコック「確かに、一ドルと二朱銀貨2枚、つまり一分が同重量なのを確認した」
○横浜・日本人商店街
両替所から出てきた一行、新しい商店街の街並みに繰り出す。
商店に並ぶ商品を見ながら、オールコックが指示をする。
オールコック「何か買ってみるか」
ある小物屋でサトウが小物を取り、店主にハウマッチなどと話しかける。
店主、言葉は分からないが、だいたいを察して
店主「へぇ、これは6分でさぁ」
指を6本突き出す。
サトウ「6分ということは、1ドルは3分だから2ドルだな」
2ドルを渡すが、店主は首を横に振る。
サトウ「なるほど、洋銀は受け取らないというわけか」
ヴァイス「長崎と同じだな」
役人が先ほど交換した銀貨を取り出した。
サトウ「交換した銀貨は1ドルイコール3分で2枚だったので、6分だったら4枚だ」
と二朱銀を4枚渡す。
また首を横に振る店主。
両手で、4、4とあと8寄こせと促す。
サトウ「なにぃ、あと8枚寄こせだと、ふざけんな、ぼったくりもいい加減にしろ」
怒って戻ってくるサトウ。
サトウ「やはり先が思いやられますね」
ヴァイス「卑しい奴らだ、やはりチャイニーズと同じか」
オールコック「・・・」
釈然としないオールコック。
オールコック「なにか変だ。ぼったくってるようには見えないが・・・。おい、ダン」
へい、と日本人漂流民と思える乗組員が来て
オールコック「ちょっとおまえ、日本語で聞いてこい。そっちの店がいい」
と先ほどとは別の店を指さし指示。
ダンはその店に入り、そこの店主と話をする。
何やら驚いているダン。
待っているオールコックら。
ダン、戻ってきて
ダン「いいですか、驚かないで下さいよ」
驚いて下さいという顔のダン。
ダン「この通貨は最近発行された二朱という銀貨だそうです。日本では4進法をとっているので、1両は4分、1分は4朱に当たります。ですから、このニ朱銀貨はちょうど1分の半分の価値しかありません」
オールコック「それがどうした」
ヴァイス「当たり前ではないか」
ダン「にもかかわらず、この真新しい1分の半分しか価値のないはずの二朱銀貨は、一分銀貨の1.5倍の重さになっているのです」
サトウ「なんだって?」
ヴァイス「どういうことだ」
がやがや騒ぎになる一行。
オールコック「まて、整理をしよう。1ドルを重量交換で二朱銀貨と交換すると2枚になる。しかし、日本では1分は4朱、二朱銀貨は一分銀貨と交換するのに2枚必要となる。つまり、1ドルが二朱銀貨を経由すると1分となってしまう・・・」
ヴァイス「ということは・・・」
一同「!?」
絶句する一同。
オールコック「1ドルが1分に・・・、そうか、分かったぞ。これは1ドルを3分から1分にしてしまう、1ドルの価値を3分の1にしてしまうための謀略だ。日本政府の新たな陰謀だ」
サトウ「そ、そんなバカな。信じられません。そんなことができるのか」
ヴァイス「なんたる狡猾、なんという姑息」
大騒ぎになる一同。
ヴァイス「まさかこんな形で条約を有名無実化する手に打って出ようとは・・・。少なくともこのような手を使って通商を妨害してきた国は世界で一つもありません。商人らから聞いてた以上の衝撃ですな」
オールコック「くっ・・・」
二朱銀を握り締める。
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