5月2019
【132】時の老中首座・水野忠邦は外国に無関心だった≫
忠固は失脚、鳥居耀蔵は出世
忠固が寺社奉行を罷免され、一方で鳥居耀蔵は勘定奉行に就任します。
それも、目付・北町奉行を兼帯したままで、です。
それは、警察庁長官と最高裁判事と財務大臣を同時に兼務することを意味します。
どれだけの権限が集中するか、考えなくとも分かることでしょう。
これまで罪をでっちあげて検挙し有罪に陥れてきた者が、その運営予算まで握ってしまうのですから。
【131】忠固(忠優)、失脚≫
エース候補だった忠固が失脚
忠固(当時の名は忠優)は政争に敗れ、寺社奉行を罷免されます。
本来、忠固は幕府政権のエース候補だったのではないでしょうか。
なぜなら、忠固は譜代筆頭・播磨姫路藩主・酒井雅楽頭家出身です。
しかし逆に、酒井家のままでは政権内閣である老中には基本なれません。
酒井家がなるのは大老であり、基本大老は名誉職、実務を行うのは大臣である老中であり首相は老中首座なのです。
大老家出身で老中の手前まで出世してきた忠固、老中首座として長期政権を担える存在だったことが伺えます。
【130】恐るべき佐久間象山の『海防八策』≫
佐久間象山が海防八策を上書
高島秋帆が捕縛され、西洋否定派が支配的になる中、容認派の老中・真田幸貫の家臣で洋学研究を指示した佐久間象山が意見書を提出します。
それが下記の『海防八策』です。
アヘン戦争の最中、ペリー来航11年前のことでした。
1 全国海岸の要所に砲台を築き、大砲を据え置く
2 オランダ貿易で使う銅をセーブして、西洋式大砲を数千門造る
3 西洋式の大船を製造する。江戸を廻る商船を難破されないようにする
4 海運に関して人選をしっかりし、異国人と通商はもちろん、全てにおいて不正を厳しく取り締まる
5 西洋式を倣い、艦船を製造し、操縦法を習わせる
6 津々浦々まで学校を整備して、教育を盛んにする
7 賞と罰を明らかにして、日本人の団結を図る
8 優秀な者を推挙する法を興す
【129】実はオランダ語の日本語≫
高島秋帆逮捕で忠固がキレる
蛮社の獄で忠固に近い渡辺崋山ら蘭学関係者が処罰されたのに続き、洋式大砲の実演演習を行った高島秋帆までも捕らえられます。
崋山らの罪状も『政権批判』などという強引なものでしたが、秋帆の罪状はもっとひどく『出島のオランダ人たちと共謀した謀反の疑い』などという根も葉もないものでした。
これで忠固もキレたのでしょう、政権内での鳥居耀蔵との対立は頂点に達します。
そして、老中首座・水野忠邦は忠固を罷免し、鳥居を昇進させます。
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