9月2020
【932】第9話 A4 『乱心』≫
○下田・下田奉行公邸・外観
声「一体いつになったら江戸に行けるのか」
○同・応接間
ハリスとヒュースケンが入ってくるなりオーバーアクションで抗議している。
応対している井上と岩瀬。
ハリス「この国に来てからもうすぐ一年だ。もはや我慢の限度は超えた。今度我が国の艦隊が到着した際には武力で訴えますぞ。現在イギリスやフランス軍が清国の広州を攻撃しているように」
井上、席に着席するように促す。
席には豪華な料理が並んでいる。
井上「まぁまぁ、ハリス殿。魚をフレッシュなうちに」
ハリス「むぅ。うむ」
席に着き、上手に箸を使いこなし、刺身を食べるハリスとヒュースケン。
ハリス「この金目鯛といいうのは本当にうまいのぉ。初めは気味が悪かったが、すっかりファンになってしまった」
ヒュースケン「私は煮付けの方が好きですな。何度食べても飽きません」
井上、苦笑している。
【931】第9話 A3 『老中再任』≫
○江戸城・外観
○同・謁見の間
老中の任命式が行われている。
辞令を受ける忠優。
N「同年9月13日、松平伊賀守忠優は老中に再任。老中首座・堀田備中守正睦に次ぐ次席の席次である。なお忠優は老中再任に先立ち、名を忠優から忠固と改名した。以後は松平伊賀守忠固として公儀に復帰することとなる」
将軍家定の席は空席。
列席している斉昭・斉彬・慶永・直弼らの顔。
下座に井戸、川路、水野、岩瀬の顔。
○同・御用部屋
堀田・久世・内藤が忠固を迎えている。
堀田「よう戻られた忠優殿、いや、今は忠固殿か」
久世「なぜ改名などされたのです?。『優しい』から『固い』に変わるぞ、という決意表明ですかな」
内藤「それはあるまい。今までだってちっとも優しくなかったではないか。はっはっは」
和やかな雰囲気。
忠固「阿部殿不在の期間、ご苦労でございましたな。阿部殿亡き今、さらに大きな決意を以て臨まねばなりませぬ。特に異国との交渉は」
一同「・・・」
表情が曇る一同。
忠固「?」
堀田「実は、、今はそれどころじゃござらん」
忠固「?」
久世「それはこれから分かります」
内藤「ほれ、来ましたぞ」
声「溜間の方々が参られました」
【930】第9話 A2 『葬儀』≫
○寺・外観(夜)
通夜が営まれている。
○同・内
棺の中の凛々しい阿部の顔。
お経が読まれ、大奥の大名が列座している。
困り顔の堀田・牧野ら老中陣。
悲しげな慶永や斉昭、慶勝ら家門・外様陣営。不敵な笑みさえ見せる直弼ら溜間陣営。
ボーンと鳴り響く木魚。
苦り切った表情の堀田が牧野に話しかける。
堀田「・・・。阿部殿はいくつでしたかな」
牧野「38・・・でしたな」
堀田「その若さで・・・、まさか伊勢殿が亡くなられるとは・・・。条約締結を控えたこの大変な時期に・・・」
牧野「・・・。堀田殿、申し訳ないがわしも老中を辞したいと考えておる」
堀田「なんですと!」
牧野「わしは伊勢殿とは一心同体。伊勢殿の影としてこれまで表に裏に動いてき申した。伊勢殿が亡くなった今、わしの役割も終わったかと」
堀田「で、ですが、阿部・牧野という長い間幕閣の首座・次席を担ってきたお二方が同時にいなくなられたら政を継続してはいけませぬぞ」
牧野「・・・」
少し考えたのち、
牧野「かの御仁の出番でしょうな」
堀田、牧野が見ている方を向く。
そこには忠優。
堀田「い、伊賀守・・・」
人気の記事
- 【100】日米修好通商条約は不平等条約ではなかった カテゴリ: 日米修好通商条約
- 【164】最も印象的なペリーの日本評 カテゴリ: ペリー/アメリカ
- 【101】江戸幕府が既に『大日本帝国』を名乗っていた カテゴリ: 江戸幕府
- 【123】日本初の外資系企業は カテゴリ: イギリス/外資企業
- 【125】南京条約、香港がイギリスへ カテゴリ: イギリス/外資企業
- 【112】江戸幕府の出世コース カテゴリ: 江戸幕府
- 【124】アヘン戦争から日本の近代史が始まった カテゴリ: イギリス/外資企業
- 【163】ペリーの知られたくない事実を知っていた日本 カテゴリ: ペリー/アメリカ, 江戸幕府
- 【130】恐るべき佐久間象山の『海防八策』 カテゴリ: 佐久間象山/吉田松陰
- 【800】『日本を開国させた男/日米和親・修好通商条約締結物語』目次 カテゴリ: 映画ドラマ脚本
最近のコメント