開国の父 老中・松平忠固

【893】第6話 D1 『大日本帝国』≫

○江戸城・外観
声「大ブリタニア王国?」

 

○同・将軍謁見の間
家定に謁見している閣僚陣。
阿部、忠優、牧野、乗全がいる。
家定「大ブリタニア王国とはどこの国じゃ」
牧野「エゲレス国にございます」
家定「何をいっておる、エゲレスはエゲレスであろう」
牧野「はい。大ブリタニア王国とはそのエゲレスの正式名称にござりまする」
家定「お主はバカか。そのブリタンンをどう略したらエゲレスになるのか、そうか、わかったぞ。余をバカだと思って適当なことを言っておるのだろう」
牧野「めめめ、滅相もない。こちらの地図にもある通り、エゲレスは現在、世界最大の領土を誇る超大国。元々はエングランドという侯国から始まり、ブリテン島全島を天下統一しブリタニアになったとのことです」

世界地図。
イギリスの版図が赤く塗られている。
地図を手に取りながら、
家定「ふーん、我が国に当てはめれば、そのエングランが三河の国、ブリタンンが日本、というわけじゃな」
牧野「は、はぁ。まぁ、そういうことでございまする」
阿部「そのエゲレスが長崎に来航し、交渉の結果、戦闘を回避し、条約を結ぶことで合意を致しました」
家定「なんじゃ、またか。メリケンといいエゲレスといい、大丈夫なのであろうの?」
忠優「エゲレスは清国に戦争を仕掛け、香港や上海などいくつもの街を占領しております。そのエゲレスとの戦争及び占領を食い止めたということは大きな成果に相違ありませぬ」
家定「・・・。彼の者は黙っておらないであろうのぉ、この神国にまたもや土足で足を踏み入れる夷狄を認めてしまったのだからな、どうする、今度も斉昭をお主が食い止められるのか、伊賀・・・」
ぬるかった家定の表情、その刹那厳しいものとなり、忠優を射抜く。
そして、阿部をもにらむ。
忠優「・・・」
阿部「・・・」
忠優、平伏し
忠優「そのあたりのご心配は御無用にて」
また、ゆるい表情に戻る家定。
家定「そうかー。大ブリタンン王国とな。ならば我が日本国も正式名称を記さんとならぬな」
一同「え?」
家定、にんまりとする。

 

○出島内・応接所
水野、永井ら日本役人とスターリングはじめ英国人たちが向かい合って座っている。
役人が文書を読み上げる。
役人「此度、大ブリタニア王国の軍船ウィンセストルの総督スティルリン、ヤーメスに相会し、長崎奉行水野筑後守、御目付永井岩之丞、『大日本帝国』政府の命を請け、一、薪水食料等船中必要の品を弁じ、又は破船修理のため肥前の長崎と松前の函館との両港に大ブリタニア王国の船を寄することを差し許す。二、長崎は今より・・・」
誇らしげな水野、永井。
ニンマリしているスターリング。
N「嘉永7年(西暦1854年)8月23日、水野と永井はイギリス東インド艦隊司令長官ジェイムス・スターリングとの間で両国の和親条約に準ずる『日英協約』を結ぶことに成功した。ちなみに協約の原文には『大日本帝国』の文字が記載され、当時すでに幕府は自らを『大日本帝国政府』と称していたことが伺える」

 

 

 

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