開国の父 老中・松平忠固

【975】第11話 D3 『挙兵』≫

○鹿児島
噴煙を上げる桜島。
鶴丸城が見える。
声「なに、条約を締結しただと」

 

○鶴丸城・内
桜島を天守から眺めている斉彬。
脇に控える西郷。
使い「去る6月19日です。23日に堀田備中守・松平伊賀守、両名が老中罷免、24日に御老公・越前慶永様、抗議のため不時登城、25日に紀州様が御継嗣と発表・・・」
斉彬「・・・。そ、そこまで急展開しおったか。伊賀守が罷免だと?では堀田も罷免となると誰がこれらを主導しておるのか」
使い「全て台慮の名で行われております」
斉彬「上様の・・・?、それはおかしい。少なくとも上様が伊賀守を罷免するはずはない・・・」
少し考えたのち、西郷を見て
斉彬「西郷、お主はどう見る?」
西郷「恐れながら。動いているのは大老井伊掃部守かと」
斉彬「うむ、何故じゃ」
西郷「条約無断締結を理由に堀田様、実際は伊賀様から実権を奪い、さらに不時登城を誘発させ御老公や越前様を断罪する。すべては陰謀やもしれませぬ」
斉彬「まさかそこまでは。井伊など異国と渡り合えるような器はないぞ」
西郷「ですが、権力に対しては並々ならぬ野心があると見ますが」
斉彬「・・・」
桜島、ぼこっと噴火する。
その噴火にも慣れたもので皆動じない。
斉彬「やるか・・・」
西郷「はい?」
斉彬「武力を以て、江戸に上府する」
西郷「!」
西郷に向き直り
斉彬「まだ御継嗣が御相続されたわけではない。不時登城の処分もすぐではなかろう。急ぎ武力上府の準備にかかれ」
西郷「ははぁ」
すばやく退室する西郷。
再び噴火する桜島をみる斉彬。

 

○蕃書調所・内(夜)
地球儀が置かれている。
岩瀬と左内が話している。
岩瀬「ま、まさか伊賀守様が罷免されるとは・・・」
左内「君が言うほどの人物ではなかったということだな」
岩瀬「・・・」
左内「だが、不時登城の処分で我が殿も窮地だ。謹慎ともなれば今後登城さえできなくなる」
岩瀬「やはり我らの敵は井伊掃部守ということだ。あの下種な門閥の塊。あいつを引きずり下ろすことが戦いに勝利することにつながる」
左内「そのようだな。だが、君は大丈夫なのか。奴は君も狙っているようだが」
岩瀬「大丈夫だ。俺の後ろにはメリケンがいる。そしてこれから大英帝国がやってくる。俺がいなければこの国は侵略され、井伊大老が全ての責任をしょい込むだけだ。簡単には俺をやめさせられまい」
左内「メリケンの後ろ盾か・・・。そして君は船や武器だけでなく、政治体制をもこの国に輸入するわけか。デモクラシーという思想をも・・・」
岩瀬、ニヤリとする。
岩瀬「左内。俺はやるぞ。この国の階級制度、家柄さえあればどんな無能でも出世するという下らない門閥を破壊し、力があれば高い地位に上ることができるメリケンのような社会にしてみせる」
左内、強くうなずき、
左内「やろう、岩瀬君。きっとできる。時代はもはやその時に来ているのだ」
がちっと手を握り合う岩瀬と左内。
置かれている地球儀。

 

 

 

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