開国の父 老中・松平忠固

映画ドラマ脚本

【870】第5話 B2 『懐柔』≫

○富士を望む海岸

 

○大森・彦根陣中
庭の先に江戸湾が見え、品川台場建設の後始末状況が見える。
忠優と直弼、内藤頼寧(54)が座している。
頼寧「忠優殿、息災か」
忠優「これは内藤頼寧(よりやす)殿、ご無沙汰して失礼しておりまする。夬殿、万代殿もお変わりございませぬか」
頼寧「うむ、元気にしておる」
直弼も不気味に愛想よく
直弼「そういえば、頼寧殿の正室夬殿、継室万代殿は伊賀殿の親類に当たるのでしたな」
忠優「万代殿は妹に、夬殿は従兄弟にあたります」
頼寧「酒井家にはたいへんお世話になっておる。ところで今日、忠優殿に来ていただいたのは他でもない。此度の条約調印であるが、祖法をないがしろにするご公儀始まって以来の愚挙。これを扇動した阿部伊勢守並びに水戸老公に責任を取らせなくてはならないと思っておるのだが」

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【871】第5話 B3 『ハウザー砲』≫

○築地演習所
寄贈されたハウィッツァー砲(ハウザー砲)が試射準備をしている。
ドーンと轟音が鳴り、煙が舞い上がる。
阿部、斉彬、宗城、岩瀬らが耳をふさいで立っていた。
斉彬「これが最新の大砲か」
岩瀬「ペルリ艦隊にかなり強引に願い出た結果、渋々ながらも何とか寄贈してもらったものでございます。ハウザー砲と申します」
宗城「ペクサンよりもさらに強力で射程も長いわけか。くっ、こうしてはおられんな」
元気のない阿部。
それに気づく斉彬。
斉彬「いかがされたかな、阿部殿。元気がないようだが」
阿部「いえ、そんなことはござらん」
斉彬「なにか考え事がござったら、なんなりとこの斉彬に申し伝えてもらいたい。阿部殿の為ならできうる限りのことは致しますぞ」
阿部、にこっとして
阿部「それは心強いお言葉。薩摩殿が味方に付いてくれたら百万の兵を得たも同然。大船に乗った気分になりまする」
斉彬「この最新の大砲、蒸気船をも来年中にはこの斉彬、完成させて幕府に献上したいと思っておりまする。はっはっは」
阿部「・・・」
やはり元気のない阿部。

 

 

 

【872】第5話 B4 『豆煎り』≫

○江戸城・将軍謁見の間
直弼が将軍の登場を待っている。
謁見がやっとかなったのでうれしい顔をしている。
しかし、そこに通されてきたのが斉昭。
直弼「な・・・」
斉昭「むっ」
直弼、斉昭が来たことに驚く。
直弼「な、なぜ貴殿が。本日はわしが上様と謁見する日でござる。貴殿は時刻を間違っておる」
斉昭も先客がいることに、そしてそれが直弼であることに驚く。
斉昭「なにを藪から棒に。間違って等おらぬわ。ワシも上様によばれて参上したまで」
直弼「そんなことはござらぬ。本日は某が献上した書状に対する御面会のはず」
斉昭「そんなことは知らぬわ」
『ふん』と直弼の隣に座る。
直弼「・・・」
やはり納得できない直弼。
直弼「そんなはずは」
斉昭「やかましい」
直弼「・・・」
動揺が隠せない直弼。
そこへさらに人が通される。
入ってきたのは忠優。
斉昭・直弼「!!」

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【873】第5話 C1 『密航』≫

○下田湾(夜)
小船を漕いでいる松陰と金子。
その先にはペリー艦隊がある。

 

 

○旗艦ポーハタン・甲板(夜)
カンカンと梯子を上ってくる音。
不審に思い、梯子に近づくと日本人が二人甲板に上がってきた。
驚く当直の水兵。
水兵「ヘイ。日本人が何をしに来た。帰れ、帰れ」
松陰「違う、攻撃しに来たのではない。私たちはこの船に乗せてほしいのです。貴国に連れて行ってほしいのです」

 

○同・提督室(夜)
コンコンとノックの音。
ノックの音に目が覚めるペリー。
ペリー「どうした」
コンティの声「お休みのところ失礼します。二人の日本人が甲板に現れまして」
ペリー「日本人だと。奇襲か」
コンティの声「いえ、そうではなくどうやらこの船に乗せてほしい、と言っているようで」
ペリー「なに」
考えるペリー。
ペリー「よし。すぐ行く。通訳のウイリアムズも起こすように」
コンティの声「了解」
ペリー、起き上がりつつ、時計を見る。
午前2時を差している。

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【874】第5話 C2 『クーデター、発覚』≫

○阿部邸・応接間(夜)
閉め切られた狭い応接間。
阿部が悩み顔で座っている。
書状を読んでいる忠優。
忠優「これは・・・」
阿部「読んでの通り、私と御老公を公儀から追放する陰謀でござる」
忠優「・・・」
阿部「彦根藩主・井伊直弼と若年寄・内藤頼寧が結託、溜間諸藩、津藩主・藤堂高之等と共謀し、彦根を大老に、先々代将軍・家斉公の実子であられる津山藩主・松平斉民様を参与を据える、というもの・・・。上様のお手に届く寸前に本郷が間違えたふりをして私に送ったのです」

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【875】第5話 C3 『自首』≫

○海岸(早朝)
海岸に上っている朝日。
砂浜をかけている二人の男。
松陰と金子。
決死の形相。
浜に打ちあがっている船に駆け寄り、中を見る。
中を確認したら、さらに向こうの船の中を見る。
はぁはぁ息を切らす二人。
金子が座り込む。
松陰「もはやこれまでか」
金子「せ、先生、これまでとは・・・」
松陰「止むをえまい、番所に自首しよう」
金子「な、じ、自首でござりますか」
松陰、うなずく。
金子「わざわざ自首することはないではないですか。まだ朝は早い。幸い誰も見ておりませぬ。このままこの場を立ち去りましょう」

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【876】第5話 C4 『家定 vs 忠優』≫

○江戸城・外観
桜は散り葉桜になっている。
家定の声「今日これから拝謁じゃと」

 

○同・庭
鯉に餌をあげている家定に対し、本郷が言上している。
本郷「はい」
家定「余は今日は忙しいのじゃ。鯉に餌をやらねばならぬし、午後には松の選定もしなければならぬのじゃ。そんな時間はないぞ」
本郷「ですが、伊賀守様がどうしても火急の用とのことで」
ピクッとそれまでおどけていた家定の表情にわずかに真剣な色が見える。
またおどけて
家定「伊賀守か。余はあやつは好かん。あやつはどうにも偉そうじゃ」

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【877】第5話 D1 『慰留』≫

○将軍謁見の間
上段の間に将軍家定が座している。
下段には、徳川斉昭をはじめとする御三家・御三卿、松平慶永らの御家門、溜間をはじめとする譜代大名、外様大名が列座している。
『嘉永7年(西暦1854年)4月10日』
下段の最前列に、阿部以下老中6人が平伏している。
阿部「此度のメリケン国との和親条約締結に際し、ご公儀を混乱させ、公方様に置かれましては過分なご心配をおかけしましたこと伏してお詫び申し上げます。その責任を取り、私、福山藩主阿部伊勢守正弘は、その責任を取り老中の職を辞したく、お願い奉りまする」
斉昭「なっ」

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【878】第5話 D2 『逮捕』≫

○松代藩邸
松陰が大砲の整備をしている。
そこへ幕士数名が入ってくる。
藩士「何事か」
幕士「佐久間象山に捕縛状が出ておる」
藩士ら「なんですと」
みな象山を見る。
象山「わしがいったい何をしたというのか」
幕士「吉田寅次郎は貴様の弟子であるな。そしてその吉田をそそのかし、密航を企て国禁を破ろうとした、との疑いがかかったおる」
驚いた表情の象山。
象山「寅次郎が捕まったのか」
幕士「渡航に失敗し自首してきた」
象山「・・・」
やばいという顔の象山。

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【879】第5話 D3 『左遷』≫

○水戸藩邸
斉昭、藤田東湖らを前に
斉昭「ワシは辞める。断じてやめる」
東湖「殿、お待ちください。早まってはなりません」
斉昭「早まるも早まらないもあるか。伊勢め。もし上様が慰留されなかったらどうするつもりだったのじゃ。自分だけとっととやめてその後の面倒は全てわしが負わさたというのか」
東湖「まさか、伊勢様に限ってそんなことはありますまい」
斉昭「ワシは聞いてなかったぞ。ワシに相談もなし、ということは同じ事じゃ。冗談じゃない。ワシは田園のカカシか」
東湖「・・・」
ため息をつく東湖。
N「嘉永7年(西暦1854年)4月30日、徳川斉昭は海防参与を辞任した」

 

○彦根藩邸
大名行列がまさに出発しようとしている。
N「一方、5日後の5月5日、彦根藩は警護地を羽田・大森から京都に変更となり、この日京へ向けて出発しようとしていた」

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